派遣社員、契約社員、アルバイト・パート、公務員は退職代行を利用できるの?

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最近何かと話題になっている「退職代行サービス」ですが、その対象は正社員だけなのでしょうか。正社員とは異なる雇用形態の派遣社員、契約社員、アルバイトやパートは退職代行を利用できるのかどうか、そして公務員も退職代行を利用できるのかどうか、調べてまとめてみました。

結論!派遣社員、契約社員、アルバイト・パート、公務員、全て退職代行を利用する事はできる!ただし・・・

先に結論から申し上げてしまうと、派遣社員だろうと契約社員だろうと、アルバイトでもパートでも、更には公務員であっても、退職代行サービスを利用する事はできます

ただし、派遣社員や契約社員の場合は「契約期間」がキーワードとなり、条件によっては退職代行サービスを使っても退職できないケースがあります。
アルバイトやパートはほとんどのケースで退職代行を利用して退職できます。
公務員の場合は、退職代行サービスを利用する事はできますが、勤務先へ出向いて「辞令交付式」に参加しなければ退職できないため、勤務先へ行くことなく退職する事は叶いません。

このように雇用形態によって「退職代行サービスがどこまでフォローできるのか」が分かれますので、次の章から細かく解説していきます。

派遣社員の場合は、派遣元の派遣会社に退職の意向を伝える流れとなる

派遣社員で、派遣先の職場を辞めたいけれど自分で言い出せないから退職代行サービスを利用したい、と思っている方は、次の手順を頭に入れてください。

退職代行サービス会社に退職代行を依頼すると、退職代行スタッフはあなたの派遣元の派遣会社に連絡を入れます。そして、あなたが派遣先の仕事を辞めたいと思っている旨を伝え、派遣会社から派遣先の会社へ退職の旨を伝えてもらうようお願いをします。

つまり、退職代行サービス→派遣会社→派遣先の会社という流れで連絡がいくわけです。

派遣元の派遣会社に知られる事なく、派遣先の会社を退職する事はできません。
必ず派遣会社を通して退職の手続きを進める事となります。

派遣社員で、派遣先の会社を辞めたいと思った際には、いきなり退職代行サービスに問い合わせるよりも、まず派遣会社のスタッフに相談してみるというのが良い方法でしょう。
それでも取り合ってくれなかった場合や、辞めないよう説得されてしまった場合に、退職代行サービスに相談し、上の流れで退職を進めていくのが良いです。

派遣会社そのものを辞めたい(登録解除を希望する)という場合には、退職代行サービスを利用し、派遣会社にその旨を伝える事は可能です。

派遣社員が退職代行を利用する場合のポイント

  • 派遣社員が退職代行サービスを利用する場合は必ず派遣会社を挟む必要がある
  • 退職代行スタッフが派遣会社に連絡を入れ、退職の意思を勤め先に伝えてもらう事をお願いする
  • いきなり退職代行サービスに問い合わせず、まずは派遣会社に相談した方が良い

契約社員の場合は契約期間に注意!1年以上勤務していればいつでも退職できる!

契約社員の場合は、原則として契約期間中は退職できないという事になっています。
ただし、下記の条件に当てはまれば退職ができます。

  • 契約期間が1年以上であり、既に1年以上勤務している
  • 会社から合意を得られている
  • やむを得ない事情がある場合(病気・怪我、家族や家庭の都合、就職当時の労働条件と差異があった、パワハラやセクハラ、サービス残業の横行、他)

・契約期間が1年以上であり、既に1年以上勤務している
・会社から合意を得られている
・やむを得ない事情がある場合(病気・怪我、家族や家庭の都合、就職当時の労働条件と差異があった、パワハラやセクハラ、サービス残業の横行、他)

これらのいずれかの条件に当てはまれば、たとえ契約期間中であっても退職できますし、これによって損害賠償を請求されるような事はありません。

契約期間が2年であっても5年であっても、1年以上勤務していれば、いつでも、どんな事情であっても退職ができるのです。
また、会社から合意を得られている場合にも退職可能ですので、1年経っていないけれど、どうしても耐えられない!という場合には一度退職代行サービスに相談してみるのもひとつの手かもしれません。

やむを得ない事情としては、ご自身の怪我や病気、またご家族の介護や育児、引っ越しなど、どうしても勤務が難しい事情が挙げられますが、これに関しては退職代行サービスを利用しなくとも、正直に上司に話せば分かってくれる事がほとんどではないでしょうか。
問題は、サービス残業の横行やセクハラ・パワハラ、また、就職当時の労働条件との差異など、会社側に退職の原因がある場合です。これらを理由に退職したいという時に、慰謝料を請求したり訴えたりしたいと思っている場合は、そこまでは退職代行サービスにはフォローできないため、あくまでも「退職の意向を伝える」事しかできない事を頭に入れておいてください。
弁護士が直接退職代行および慰謝料の請求などにも対応してくれるような代行サービスであれば、全て任せる事ができますが、弁護士が直接退職代行をおこなっていない退職代行サービスでは、金銭の交渉はできません。

契約社員が退職代行を利用する場合のポイント

  • 契約期間が1年以上で1年以上勤務していれば、事情に関わらず退職できる
  • やむを得ない事情の場合は、1年経っていない場合でも可能
  • 弁護士が直接対応してくれるサービスでなければ、金銭の交渉はできない

アルバイト・パートは比較的安く退職代行サービスを利用できる

アルバイト・パートの方で自分から職場に退職の意向を伝えられず悩んでいる方は、退職代行サービスを利用する事でスムーズにストレス無く退職する事ができます。

正社員や契約社員などに比べて退職のハードルがそれほど高くないアルバイト・パートは、正社員よりも安い金額で退職代行を依頼する事ができ、その相場は3万円前後となっています。

もちろん自分で直接職場の上司に退職の意向を伝える事が一番良い方法ですが、人手不足の職場などでは、退職を引き留められたり、説得されたり、ひどいところだと脅されたりして、退職が難しいケースもあります。
そのような時に、退職代行サービスを利用すれば、嫌な思いをする事なく、ストレスも抱え込まずに退職する事ができるのです。

時々「バイトがばっくれてさ・・・」などという大手企業の社員や飲食店店長の愚痴を耳にする事がありますが、勤務先に無断で身勝手に「辞める」というのが一番やってはいけない事です。確かに何も言わずにアルバイト先に行かなくなり、電話も着信拒否にするなり番号を変えるなりしてしまえば、楽かもしれません。
しかし、正式な手続きを踏まずに勝手に「事実上退職」という強硬手段を取ってしまうと、例え会社側から訴えられても何も反論できなくなってしまいます。

ばっくれるぐらいならば、退職代行サービスに依頼し、堂々と胸を張ってきちんと退職しましょう。

アルバイト・パートが退職代行を利用する場合のポイント

  • アルバイト・パートの場合は他の雇用形態より、退職代行でスムーズに退職できる
  • 正社員よりもアルバイト・パートは安く退職代行サービスを依頼できる
  • 無断で身勝手に辞めると、訴訟などで反論が困難になる

公務員の退職は必ず職場に行かなければならない!?

最後に公務員の退職についてです。
公務員の退職については他の一般的な会社員とは異なり少々厄介なポイントがあります。
それが「辞令交付式」です。このせいで「勤務先に行くことなく退職ができます」とは言えないのです。公務員の方は、この辞令交付式に出向かないと退職できないため、退職代行サービスを利用したとしても、必ず勤務先に行かなければならないのです。

退職代行サービスの多くが「即日退職可能!辞めたいと思った瞬間からもう会社へ行かなくてOK!」と謳い、退職届なども全て郵送で送れば良いから、退職代行サービスに電話をした瞬間からもう会社へ行かなくても良い、と訴求しています。

しかし、この例外が公務員なのです。
辞令交付式とは、辞令交付を直接受け取り、辞令・任命書を受理する事によって初めて退職が認められるというもので、これに参加しないと「分限処分」と呼ばれる処分を受ける事になります。「分限処分」は「他の職種に移った方が良い」という処分で、懲罰的な処分ではないのですが、気持ちの良いものではありませんし、円満退職というわけにはいかなかったという事になってしまうため、辞令交付式には参加した方が良いです。

こういった理由から、勤務先に行かずに辞めたいから退職代行サービスを利用しようと思っていたのに・・・という方にとっては非常に残念ですが、退職代行サービスを利用する意味はほぼ無いと言えるでしょう。

逆に、上司などに退職の意向を伝える事ができないのでそれだけでも代行してほしい、退職について相談に乗ってほしい、退職の手順や上手い方法を知りたい、という方にとっては退職代行サービスを利用する価値があります。

退職の意向を伝える事だけ代行し、あとの事務手続きは自分自身でおこなう、という流れならば退職代行サービスを利用する事は可能です。

公務員が退職代行を利用する場合のポイント

  • 公務員が辞職する場合は辞令交付式が必須のため、辞職する前に必ず勤務先に行く必要がある
  • 勤務先に出向かずに辞めたい公務員の人には、その用途としては退職代行サービスは意味がない
  • 公務員でも退職の意思を代わりに伝える等の用途では利用する価値はある

まとめ

  • 派遣社員の場合は、退職代行サービスを使用した場合でも、派遣会社を通して退職の手続きを進める事となる
  • 契約社員の場合は、1年以上勤務していればいつでも退職できるので、退職代行サービスを利用可能
  • 公務員の場合は退職の意向を伝える事だけ代行し、あとの事務手続きは自分自身でおこなう、流れならば退職代行サービスを利用可能