社員が退職代行を使ってきたけど拒否できるのか?
ある日、電話に出たら突然「退職代行〇〇の□□と申します。御社の△△様から退職代行の依頼を賜りまして…」と言われたら、驚いてしまうことでしょう。
最近「退職代行サービス」たるものの利用数が上がっているとはなんとなく耳にしていても、まさかウチの社員が…とショックを受ける上司の方もいらっしゃるかもしれません。
近年退職代行の利用は確実に増えており、退職代行を用いての退職は珍しいものではなくなってきています。
退職代行業者から電話を受ける日が来る可能性は決して低くないのです。
では、社員が退職代行を使って退職したいと言ってきたら、どうしたら良いのでしょうか。
その申し出を拒否することはできるのでしょうか。
詳しく解説していきます。
目次
退職代行を名乗る人物から連絡がきたら
退職代行を名乗る人物から連絡がきたら、どうしたら良いのでしょうか。
パニックにならずに冷静に対処して、順を追って手続きを進めましょう。
まず退職代行業者について調べる
まず、退職代行の会社名、サービス名を確認します。しっかりとメモを取って、すぐにインターネットで検索してください。
検索してヒットして、会社情報もしっかりと掲載されていれば、ひとまず信用して大丈夫です。念には念を、ということで、一旦電話を切ってから公式サイトに記載されている番号に電話をかけて確認すると、より安心です。
公式サイトそのものが詐欺サイトである可能性も無きにしもあらずなので、まとめサイトや口コミサイトも併せてチェックしておきましょう。
本人からの依頼であることを確認する
退職代行業者がしっかりとしたところであれば、ほぼ間違いなく本人からの依頼であると言えるのですが、念のため本人からの依頼があったのか確認しましょう。
委任状や契約書などを提示してもらうのが一番ですので、メールアドレスを伝えて画像を送ってもらったり、FAXでコピーを送ってもらったりしましょう。
本人に直接連絡できるのが一番手っ取り早いのですが、退職代行を利用して辞める社員は会社と連絡を取りたがらないことがほとんどなので、無理に本人と直接連絡を取ろうとすることは避けましょう。
ひとつ、本当に本人からの依頼かどうか確認する方法としては
- 本人に電話をかける
- 留守電になったら「この電話を受けたら退職代行サービスにこのことを伝えて会社に連絡するように言ってくれ」と残します。
- 退職代行サービスから電話をもらったら確認完了です。
本人が電話に出ない、すぐに切られてしまう、という場合は、メールで同じ内容を送って退職代行サービスからの連絡を待ちましょう。
雇用規約などを確認する
信頼できる業者であること、本人からの依頼であること、この2点を確認できたら、雇用規約など、退職に関する決まり事を確認します。
退職するために必要な書類や、必要な条件、退職の申し出があってから何日後に退職できるのか、有休消化状況など、細かく確認します。
(退職を受け入れる場合は)退職の手続きなどを代行業者に案内する
退職を受け入れる場合は、退職に関する指示や確認事項を代行業者に伝えます。
退職届の作成および郵送方法、有休消化の有無、退職日、会社に返却すべきもの(社員証や保険証など)、会社に置いてある当人の荷物の扱いなど、漏れの無いように案内しましょう。
(退職を受け入れる場合は)退職手続きを行う
退職の案内が完了したら、あとは当人からの退職届や返却物の到着を待ち、所定の退職手続きを行います。
不明点や確認点がある場合は、退職代行サービスの担当スタッフに連絡しましょう。
(退職を受け入れる場合は)退職後に離職票などの必要書類を郵送する
退職代行を利用した退職は、正規の退職扱いとなるため、通常の退職と同じく、離職票や年金手帳、源泉徴収票など、必要な書類を当人宛てに郵送しましょう。
退職代行の退職は原則拒否できない
さて、ここで大切なお話です。
本記事最大のテーマである「社員が退職代行を使ってきたら拒否できるのか」ということですが、結論をズバッと言ってしまうと、原則拒否できません。
法律では退職を申し出た2週間後には退職できると定められている
労働基準法によると、退職を申し出た2週間後には退職できると定められています。
この申し出の方法についての言及はなく、本人が直接口頭あるいは書面で伝えなければならない、などの決まりは無いのです。
また、会社ごろの規定は色々ありますが、会社の規定よりも法律の方が優先されるため、この「2週間後には退職できる」ということが優先されてしまいます。
引き止めたくても、会社にその権限は無く、本人が退職を希望する限り、それを受け入れざるを得ないのです。
有期雇用の場合は拒否することもできる
ただし、ひとつだけ例外があります。
それは「有期雇用」契約を結んでいるケースです。
契約した期間は働ききることが条件となっているため、この期間が満了する前に退職することは原則認められていません。
有期雇用で働いている社員が、ある日突然退職代行を使って辞めたいと言ってきた場合は、それを拒否できる可能性があります。
ただし、これも条件により、例えば当人の体調不良や家庭の事情など、のっぴきならない事由があれば退職を認めなければならないケースもありますので、退職理由についてはよく確認しましょう。
退職代行による退職を希望する社員への対応でしないほうが良いこと
退職代行を使って退職を申し出られたら、原則それを受け入れて退職の手続きを進めるというのが、会社の一番良い対処法ですが、ここで「やってはならない」というか「やらない方が良い」ことをおさらいしましょう。
退職の拒否
まず、先ほど解説した通り、退職の拒否です。
法律でも退職は全ての労働者に認められた正当な権利と定められているため、これを拒否することは原則できません。
拒否すると権利の侵害になってしまうので、どれほど惜しい人材だったとしても、受け入れるしかないのです。
損害賠償の請求
急に辞められて、会社としては大きな損害だ!賠償金を請求してやる!!
このような「脅し」はよく聞かれますが、これもやらない方が良いことです。
なぜなら、損害賠償を請求できる事例は、その人が退職したことによって会社に「甚大」あるいは「深刻」な損害が生じた場合だけだからです。
もちろん、とんでもなく大きな損害が出てしまった場合は、損害賠償の請求も可能です。
ただ、多くのケースで、勝訴できるほどの損害を、たった一人の社員が出してしまうということはありません。
裁判には費用も時間もかかりますし、人員も必要ですので、このような無駄な労力を使ってまで当人に損害賠償を請求するのは賢いとは言い難いでしょう。
訴訟
損害賠償に似ていますが、賠償金を求めるのではなく、単純に訴えるということもおすすめしません。
理由は損害賠償と同じで、裁判には費用も時間も人員も必要になり、多くの損失となってしまうからです。
そして、退職代行を使って退職しただけならば、勝訴することは難しく、結局無駄骨となってしまう可能性が非常に高いです。
退職代行を使った退職も受け入れる準備を
これから先、ますます退職代行の利用は増えていくことが予想されます。
本当ならば、きちんと顔を見て「退職したい」と告げてもらいたい、引継ぎなどもしっかりしてもらってスムーズに退職してほしい、そんな思いが強いかと思います。
退職代行の利用を減らすためには、会社の体制を「話しやすい」ものに変え、自らの口で「退職したい」と伝えやすい雰囲気を作っていくのが大切です。
それでも、どんなに良い職場でも、社員が退職代行を使って退職する可能性はあります。
その社員自身がものすごく気を遣う性格だった場合「迷惑をかけてしまうと思うと自分からは言い出せない…」と悩んでしまうことがあるからです。
退職代行を使われてしまうような会社だったなんて…と落ち込んでしまうこともあるかもしれませんが、こういった退職代行による退職にもしっかりと対応できるようにしておくことが未来の安心につながります。まずは「知ること」から始めてみてください。
まとめ
- 退職代行を名乗る人物から連絡がきたら退職代行の会社名とサービス名をまず確認
- 次に雇用規約など退職に関する決まり事や有休消化状況を確認
- 退職代行を社員に使用されたら原則拒否できない