退職代行を使って急に辞めたら会社から損害賠償を求められるの?
退職代行を使えば、即日、しかも会社とは一切連絡を取ることなく、仕事を辞めることができます。しかし、これを「そんな勝手なこと」と感じる人も少なからずいるでしょう。
「そんな勝手なこと」をして、会社から損害賠償を求められたりすることはないのか、そう不安に思っている方へ、今回は「退職代行を使って急に辞めたら会社から損害賠償をもとめられるのか」というテーマで解説していきます。
目次
退職代行は「勝手なこと」でもなければ違法行為でもない
まず、大前提ですが、退職代行は違法行為ではありません。
時々「退職代行を使って辞めるなんて違法だ!訴えてやる!」とか、「退職代行?それは非弁行為だよ。犯罪だよ?」そんなことを言って脅す上司がいるようですが、退職代行そのものには違法性は全くございません。
ただし、退職代行サービスでできること「退職の意思・意向を勤め先に伝える」ということを越えて、交渉にまで踏み切ってしまうと、これは「非弁行為」となり、法を犯すことになります。
「非弁行為」とは弁護士資格を持たないものが、報酬を得て交渉することを指して、これをやってしまうとアウトです。(弁護士による退職代行であれば勿論OKです)
ただ、交渉ではなく、あくまでも使者として「伝える」役目だけを担うということであれば、退職代行サービスは全くもって違法ではなく、合法の、ちゃんとしたサービスです。
退職は全ての人に認められた権利で「勝手なこと」ではない
次に、退職代行を使った退職が「勝手なこと」かどうかという論点ですが、これも決して「勝手なこと」ではありません。
なぜなら、退職とは全ての労働者に平等に与えられている立派な権利だからです。
退職を申し出た日から2週間後には退職ができます。また、事情があれば退職を申し出た当日に退職することもできます。
退職代行を使うというのは、あくまでも「退職の意思を伝える手段として退職代行を利用した」というだけであって、退職することは悪いことでも勝手なことでも無く、更に即日退職もそれ相応の事情があれば認められますし、事情が無くても「2週間の有給消化もしくは欠勤」により、退職を申し出てから2週間会社を休めば事実上即日退職が可能となるわけです。
だから、退職代行サービスを利用した即日退職は勝手なことではなく、誰しもに与えられた正当な権利なのです。
会社から損害賠償される可能性は「例外を除いて」ほぼゼロ
では、退職代行を使って急に仕事を辞めたら、会社から損害賠償を求められるリスクはあるのでしょうか。
答えは、ほぼ「ノー」です。
会社が損害賠償を請求するような事態というのは、「会社にとって深刻あるいは甚大な損害をもたらされた」事態を指しますので、社員1人が会社を辞めたぐらいで、損害賠償騒ぎになることは、ほぼあり得ません。
また、損害賠償を請求するということは裁判を起こすということになりますが、裁判には費用も時間も人手も必要です。たかが、なんて言っては失礼ですが、たかが1人の社員のためにそこまでのコストをかけてまで損害賠償することは無いと言えるでしょう。
損害賠償を請求される可能性があるケース
しかし、「ほぼ」であること、そして「例外を除いて」という文言にも注目しなければなりません。
損害賠償は「会社に深刻あるいは甚大な損害をもたらしてしまった」場合には請求される可能性があります。
その具体例を見ていきましょう。
1.機密情報や顧客情報などの漏洩
会社の機密情報や顧客情報など、トップシークレットな情報を漏らしてしまうと、これは会社にとって深刻極まりない損害となりますので、損害賠償を請求される可能性があります。
2.金銭の横領
金銭の横領、これはもはや犯罪ですので、損害賠償の請求はもちろん、逮捕されることです。
この記事を読んでいる方に、こんなことをしている方はいないと思いますが、絶対にやめましょう。
3.会社の備品の紛失や損壊
例えば会社のパソコンを壊してしまったり、社用車や社用携帯を壊したり紛失したりしてしまったりした場合には、損害賠償を求められる可能性があります。
また、貸与物を返却し忘れて自分のものにしてしまった場合(いわゆる「借りパク」というやつです)も、訴えられる可能性があるので注意しましょう。
4.他の社員の引き抜きをした上での退職
これは意外と思われるかもしれませんが、他の社員を引き抜いたり、退職を促したりした上で退職し、その社員も退職した場合、誘った本人が訴えられる可能性があります。
難しいところで、水面下で引き抜きをして、あくまでも本人の意思による退職だったと主張すれば勝訴できる場合もありますし、そもそも引き抜いたり退職を促したりしたわけではなく、同僚同志で「俺たちで独立しようぜ」と約束を交わしていた場合はこの限りではないので、微妙なところではあります。
ただし、場合によっては、引き抜いたり退職を促したりしたことによって会社に損害が生じたということで損害賠償を求められることがあります。
5.海外研修などから帰国した直後の退職
例えばアメリカなどの海外に1年、2年…と長期に渡り研修に行ってきて、帰国していよいよ戦力に…という段階で退職してしまった場合にも損害賠償を求められることがあります。
会社からすれば、海外研修で出資した費用は莫大なものなので、これは「甚大な損害」となるわけです。
端的に言えば「金をかけて育てたのに裏切られた」といったところでしょうか。
ただし、退職の理由や事情として「これは退職せざるを得ない」と認めさせることができれば、勝訴の可能性もあります。例えば、いじめ、ハラスメントなどや、提示されていた条件と全くことなるものだった、などです。
6.有期契約中の正当な理由のない退職
最後に、これはリアルな話なのですが、有期契約中に正当な理由なくして退職してしまうと、これも損害賠償請求の対象となっていまいます。
雇用形態には有期契約と無期契約があり、有期契約の場合は決められた契約期間中に退職することは認められません。
ただし、人生何があるか分かりませんので、健康上の事情や家庭の事情などの「やむを得ない正当な理由」がある場合は、契約中であっても退職ができます。
ただ、仕事が嫌になった、やる気がなくなった、不満があって辞めたいというだけで退職代行を使って理由もきちんと伝えないまま退職してしまうと、損害賠償を求められる可能性があります。
人間関係で悩んでいた、精神的あるいは身体的に辛い、聞いていた条件と違ったといった理由は場合によっては「正当な理由」として認められることもありますので、退職代行サービスに依頼する際には、まずは自分が有期契約中の身であること、そして退職したい理由を伝え、訴えられる可能性があるかどうか相談してみましょう。
「引き継ぎ」によって損害賠償のリスクを回避
損害賠償の可能性を少しでも下げるために、例え即日退職であったとしても「引き継ぎ」はしっかりとやっておきましょう。
自分しか掌握していない仕事や情報、あるいは自分にしかできないような仕事を抱えたまま、何も引き継がずに即日退職してしまうと、このことが「会社に甚大な損害をもたらした」とされてしまうことがあります。
この場合、会社から損害賠償を求められる可能性が出てきますので、自分がいなくても誰かがその仕事を引き継げるように「引き継ぎメモ」を残すか、後日作成して郵送するか、そのどちらかの方法できちんと引き継ぐことをおすすめします。
中には「散々な目に合わせた会社の奴らを困らせてやろう」という仕返しの意図で、わざと引き継ぎをおこなわずにドロンしてしまえ!と考える方もいらっしゃいますが、あとで訴えられるかもしれない…という可能性を考えると、ここは我慢してしっかりと引き継いでおいたほうが良さそうです。
まとめ
退職代行を使って急に会社を辞めても、会社から損害賠償を求められる可能性は極めて低いです。ただし、会社に深刻あるいは甚大な損害を与えてしまった場合には損害賠償が請求されることもありますので、そのようなケースに当てはまらないかどうかチェックしてから退職するようにしましょう。
自分のケースはリスクがあるのか、訴えられるのか、と不安になったら、まずは退職代行サービスに気軽に問い合わせてみましょう。
まとめ
- 退職代行そのものには違法性はなく、勝手なことでもない
- 退職とは全ての労働者に平等に与えられている立派な権利である
- 退職代行を使って急に仕事を辞めても、会社から損害賠償を求められるリスクはほぼない
- 訴訟が不安になったら、まずは退職代行サービスに気軽に問い合わせ