退職代行で残業代は請求できるのか
退職代行を使って退職した場合の給料や残業代、ボーナスなどの支払いはどうなるのでしょうか。
基本的に、退職代行を使ったかどうかは関係なく、会社の規定に基づいて支払われるべき給料および残業代は問題無く支払われます。
しかし、中には残業代が未払いのままという会社もあり、このような会社を俗に「ブラック企業」と呼ぶこともあります。
今回は、退職代行を使った場合の残業代について、請求できるのかどうか解説していきます。
目次
毎月の支払が基本給に残業代が加算されて支払われていれば自動的に支払われる
残業代の算出方法は企業によって様々です。
規定で決められた定時(例えば9時出勤18時退勤、昼休憩1時間など)を越えた部分の業務を残業と言い、この残業に対して支払われる報酬を残業代と言いますが、中には「みなし残業」や「裁量労働制」を採用している企業もあります。
これらの言葉や制度について詳しく解説していると本題から逸れてしまうため、今回は軽く触れるだけにしますが、みなし残業は、予め想定される残業代を基本給に追加している状態で、「みなし」分の時間を越えない限りは残業代が更に追加されることはありません。
裁量労働制は、予め定時内に完結できるであろう仕事量を従業員に課して、その仕事が定時内こなせないのは従業員の力量不足として、特に残業代などは支払わないという制度です。
業種や職種によって残業や残業代についての規定は異なりますが、毎月の給料の支払い時に、対象月の残業代が加算されて支払われている場合は、特に心配する必要はありません。
退職代行を使い退職すると、退職の意向を退職代行スタッフが伝えたその日から2週間後以降に退職することができます。2週間の間は有給休暇か欠勤扱いになります。
有給の場合は、会社へ行かない期間にも給料が発生します。(ただし勿論残業代は発生しません)
欠勤の場合は、「退職する」と伝えたその日までの給料が期日に支払われます。
残業代が毎月きちんと加味されて支払われている会社の場合は、実際に残業した分の残業代が最後の給料と同じタイミング、もしくは会社の規定のタイミングで支払われます。
特に請求することなく、当たり前に残業代が支払われると理解して問題ありません。
未払いの残業代については退職代行業者は支払ってほしい旨を「伝言する」のみ
問題は、残業代の未払いがある場合です。
世に言う「ブラック企業」の場合、会社規定では残業代を支払うことになっているのに、さも「みなし残業」や「裁量労働制」であるかのように言いくるめて残業代を支払わないというケースもあり、この場合は残業代の未払いにより「退職したい」と思い、どうせなら未払いの残業代もしっかりと請求してやりたいと思うのが退職者の本心でしょう。
未払いの残業代などを請求することについては、退職代行サービスは「伝言する」ことだけできます。会社に直談判したり法的な措置を取ったり、交渉したりすることは、一般的な退職代行サービスにはできません。
なぜなら、そのような行為は弁護士資格を有する人物のみに許されているからです。
もし、一般的な退職代行サービスが、勝手に交渉したり「法的措置に出る」などと言ったりすれば、それは「非弁行為」という違法行為に当たると糾弾されてしまいます。
民間の退職代行サービスは、あくまでも「未払い残業代があるとの事で、お支払いいただきたいと言っています」と伝えることしかできないのです。
そのため、そのまま未払いの残業代を踏み倒されてしまう可能性は十分考えられます。
法的措置を取り請求したい場合は弁護士による退職代行サービスを利用
ただ伝えてもらうだけではおそらく残業代は支払ってもらえないだろう…どうにかして法的措置でも何でも取って残業代を取ってやりたい…そう思ったら、弁護士による退職代行サービスを利用するよりほかありません。
実際に弁護士による退職代行サービスも存在し、一般的な民間の退職代行サービスよりも高値ではありますが、依頼することができます。
弁護士であれば交渉も法的措置もお手の物なので、残業代を支払わせることができるかもしれません。
ただし、気を付けなければならない点が2点あります。
ひとつは、弁護士に依頼する場合、依頼料が高くなることです。
弁護士による退職代行サービスでも、最近は安いところでは3万円程度で請け負ってくれます。しかし、それは交渉などをしない、一般的な退職代行業者と同じ内容のサービスのみの場合です。
実際交渉や、内容証明を送る場合などは、その費用に上乗せされて、高額な依頼料となってしまいます。
もうひとつは、会社に支払い義務が無いのに請求しないように規定をしっかり確認するべきということです。
最初に解説した通り、残業や残業代の規定は会社によって様々です。
「全然残業代を支払ってくれない!未払いだ!訴えてやる!!」と思っていたら、実は規定では「裁量労働制」だったということも考えられます。
本来であれば入社する時にしっかりと確認すべき点なのですが、このような重要な点を知らないまま「サービス残業」というひと言で括ってしまっている人は多く、自分の残業代が支払われているのか、いないのか、支払われるべきなのか、そうでないのか、ちゃんと分かっていないケースも少なくありません。
自分の残業と残業代の規定がどうなっているのか、しっかりと確認しましょう。
未払い分の残業代と退職代行費用を天秤にかけて検討する必要がある
いざ、弁護士に依頼して残業代を支払ってもらおうと思った際には、弁護士への依頼費用と、支払われるべき残業代を天秤にかけて検討しましょう。
高額な依頼料を支払っても、支払われる残業代がそれを下回ってしまってはまるで意味がありません。
また、裁判沙汰までもつれ込んだ時に、時間も手間も、そして余計な費用もかかってしまうため、裁判になりそうな事態となったら、身を引くか諦めずに戦うかという点も、よく考えた方が良さそうです。
弁護士に依頼するのも良いですが、本当に不当に残業代が未払いのままだという場合には、退職前に労基に相談してみるというのもひとつの手です。
弁護士に相談する前に、一般的な民間の退職代行サービスに問い合わせて残業代についても質問してみると、例えば「労基に相談してみては」や「組合があるならそこにかけあってみては」など、有益なアドバイスをくれることもあるので、一度相談してみるのも良いかもしれません。
一生懸命働いた聞の報酬はしっかり受け取って退職したいという気持ちを諦めずに、色々な方法を試してみてください。
退職代行で残業代を請求する場合のまとめ
- 弁護士でない退職代行サービスでは残業代の請求については伝言することはできる
- 法的措置を検討に入れるのならば費用が高くなるが弁護士を利用
- 「みなし残業」や「裁量労働制」の会社では残業代を請求できない