退職代行で有給消化は可能?
会社を辞めたいけれど、なかなか自分からは「辞めます」と言い出しづらい・・・
そんな時に助けてくれるサービスがあります。それが退職代行サービスです。
退職したいと思っている方が退職代行サービスに退職代行を依頼すると、スタッフが依頼者の方の代わりに退職の意向を会社に伝え、退職をサポートしてくれます。
このような退職代行サービスがここ最近話題になっています。
退職代行サービスが履行してくれる事は「会社に退職の意向を伝える」事がメインとなります。しかし、退職するにあたり、色々と疑問や要望があるのではないでしょうか。
例えば「いつ辞めたい(即日なのか、それとも数週間後なのか)」という事や「退職金はもらえるのか」という事などです。
その中のひとつに「有休を消化して退職したい」というものが挙げられるでしょう。
退職代行サービスを利用して退職する場合、有給は消化する事ができるのでしょうか。
今回は退職代行で有給消化が可能かどうか、徹底解説していきます。
目次
そもそも有給とは労働者全員が当然取得できる正当な権利
有給とは、減給の対象となる欠勤とは異なり、会社を休んでも給料が支払われる「年次有給休暇」の略です。国際労働機関第52号条約によって定められた法的規制で、正社員の場合は雇入日から半年間勤務し、労働日の80%以上出勤していれば1年につき10日分有給が付与されます。その後勤務年数が増えるに従い有給の日数は増えていきます。
有給は全ての労働者が取得できる正当な権利で、会社の都合で「取らせない」という事は原則認められません。そんな事をしてしまえば労基が厳しい指導をしにすっ飛んでくるでしょう。
ただし、企業側には「時季変更権」という権利があり、この権利を行使されると申請した有給を取得できない事があります。これは、例えば「退職します!有給があと20日残っているので明日から月末まで有給を使い切って月末付けで退職させてください!」と社員が要望を伝えた時に、引継ぎなどの関係でどうしても会社に出社してもらわなければ会社側に甚大な被害が生じるという事が認められた場合に適用されます。このようなケースでは会社側は有給の取得を拒否し出社するように要請する事ができます。
ただ、有給を使われて会社を休まれると会社が回らなくなるというほどの甚大な影響が無い限りは使えない権利なので、ほとんどの場合は有給は無条件で取得する事ができると思って間違いないでしょう。
退職代行サービスを利用した場合でも有給消化はできるのか
退職代行サービスを利用して退職した場合、有給消化はできるのでしょうか。
結論から言えば、できます。
なぜなら前述の通り有給は全ての労働者に与えられた正当な権利だからです。会社側にこれを拒む事は原則できません。
ただ、ひとつだけ注意しなければならない点があります。
それは有給取得の交渉に関する事です。
有給を取得するタイミング、何日消化するのか、いつまで有給を使うのか、このような交渉は、退職代行サービスに「丸投げ」する事はできません。
なぜなら退職代行サービスは会社と交渉ができないからです。
厳密に言うと、弁護士ではない人間がスタッフとして退職代行をおこなう場合は、会社との直接交渉ができない、という事になります。
権利の主張など、法律が絡んでくるような交渉をおこなう事ができるのは弁護士資格を持つ人間だけであり、弁護士ではない人間が業務として報酬を得る目的で法律が絡む交渉を行う行為は「非弁行為」として罰せられます。
そのため、退職代行サービスは有給消化の直接交渉は原則できない事になっています。
しかし、ここでポイントとなるのが「直接交渉」ができないというところです。
依頼者の要望を伝える事、あるいは退職代行サービスの顧問弁護士の主張を伝言する事、これらの行為は非弁行為とならないため、退職代行サービスのスタッフも会社側へ伝える事ができます。
依頼者から「あと有給が〇日残っているはずだから、〇月〇日から〇日間消化し、〇月〇日付けで退職したい」という要望を聞ければ、その内容をそのまま会社へ伝える事ができます。
そして会社は、前述の通り有給取得を拒む事が原則できないため、よほどの事が無い限り有給が消化できるのです。
退職代行サービスを利用した場合の有給消化に関するポイント
- 有給休暇は労働者に与えられた正当な権利なので、会社側は原則として拒否できない
- 有給の交渉は弁護士ではない退職代行業者ではできない
- 一般的な退職代行サービスでは有給の要望を会社に伝えることはできる
会社に悪いから・・・という理由で有給を取らないという選択肢は無い
これは退職時に限った事ではありませんが、有給を取得する事を「会社に悪い」と思う人が多いのが日本の会社員たちの特徴のひとつです。
「みんな会社のために一生懸命働いているのに、自分だけ有給を取得するのは申し訳ない」と同僚たちの事を気遣ったり「会社が大変な時に身勝手に休むわけにはいかない」と会社の事を思って我慢してみたり、会社に悪いから、社員に悪いから、という理由で有給を取らない人が多数いるのです。
また、会社側も社員たちに無言の圧力をかけている事があります。
「こんなに大変な時に、まさか休むなんて言わないよな」
「みんな必死に働いているのにお前が勝手に休んで良いわけがないだろう」
「有給休暇を取るなんて会社に貢献する気が無いんだな」
といった具合で、実際に言葉にして社員を洗脳するブラック企業もありますし、声高に叫ばずとも無言でこのような雰囲気を醸し出して社員が堂々と有給を取る事ができない空気を作り出している企業もあります。
しかし、しつこいようですが、有給は全ての労働者に与えられた正当な権利であり、会社側に拒否する権限はありません。
誰であろうと有給は堂々と取得しても良い、いや、堂々と取得すべきものなのです。
有給が取れない、取りにくい雰囲気を作ってしまっている会社は社員に甘えています。
そして社員もまた会社に依存するような形で他の社員も道連れにし互いに足を引っ張り合い「有給を取れない、取りにくい」雰囲気を作り上げているのです。
このような身勝手な会社に踊らされる事はありません。
退職する時も、そうでない時も、堂々と有給を取得して良いのです。
有給を取るときのポイント
- 会社に悪いという理由で有休をとらない人が多いが、有給は正当な権利なので行使すべき
- 同調圧力で有休をとりにくい空気の会社がある
- 有給は正当な権利なので会社に遠慮する必要全くない
退職時に有給消化する事の最大の意義は給料が支払われるという事
もう会社へ行くわけじゃないなら、別に有給を消化しなくても良いや・・・
もし、そのように思っているならば、それは大変に勿体ない事です。
有給は給料が発生する休日です。会社へ行かなくてもお金がもらえるのです。
例えば有給が30日残っている場合、丸1ヵ月会社を休んでも1ヵ月分の給料が支払われます。
1ヵ月分の給料というと、決して馬鹿にならない金額になりますし、この給料を会社へ行かずとも手に入れられるのであれば、貰わない手はありません。
何度もしつこいようですが、有給は正当な権利であるからして、自分の手元に残っているならば使わないという選択肢は無いと言っても過言ではないのです。
「でも、会社へ行くわけじゃないんだし・・・」と変に気を遣う必要はありません。
貰えるものはきちんと貰って退職する、これが正しい退職の仕方です。
まとめ
今回は、退職代行サービスを利用した際に有給消化ができるのかどうか、というところを中心に解説しました。有給は正当な権利であるため、ご自身できちんと有給を取得する旨を退職代行サービスのスタッフに伝えれば、スタッフはその主張をそのまま会社にお伝えします。
その主張は原則会社側は拒む事ができませんので、問題無く有給消化ができるのです。
ポイント
- 退職代行サービスは有給消化の直接交渉は原則不可だが、会社に依頼者の要望を伝える事はできる
- 正当な権利を行使するのが正しい退職の仕方
- 有給は全ての労働者に与えられた法律で定められた正当な権利のあるので、会社側にこれを拒む事は原則できない