従業員に退職代行サービスを使われた時の対策・対応
ある日突然、聞いたこともない業者から「〇〇さんの退職のご意向をお伝えいたします」といった電話がかかってきたら、驚いてしまうことでしょう。
近年、退職代行サービスを用いた退職は増えてきており、自分で直接退職する意向を上司に伝えずに退職するという行為が浸透しつつあります。
退職代行サービスのスタッフから電話を受け取るということは、もはや他人事ではないのです。
それでは、従業員に退職代行サービスを使われたら、一体どのように対応したら良いのでしょうか。詳しく解説いたします。
目次
退職代行サービスとは
まず、退職代行サービスの何たるかを知らなければなりません。
退職代行サービスとは、その名の通り退職を代行するサービスです。より正確に言うと「退職の意向を伝える」サービスです。
実際に退職届を書いて提出するなどの手続きは本人でなければできませんので、そういったことは本人が後から郵送で手配しますが、退職するための最初の一歩となる「退職する」という意思表示を代行するのが退職代行サービスの役目です。
なぜ自分で申し出ず退職代行サービスを使って退職するのか
なぜ最近この退職代行サービスの利用者が増えているのでしょうか。
どうして従業員本人が退職したいということを申し出ることができないのでしょうか。
その理由には様々なものが考えられます。
- 入社して間もないため申し訳なくて切り出せない
- 人手が足りないのに辞めたいなんて言い出せる空気ではない
といった「申し訳ない」という気持ちが大きく、自分からは言えないという理由。
- うつ状態になってしまい、もう会社へ行く気力が無い
- 精神的に追い詰められてしまい、退職の意向を伝えることすらできない
といった「追い込まれた」という理由。
- 以前退職したいと申し出たが断られてしまった
- 引き止めにあってしまい退職させてくれない
といった「辞めたいのに辞めさせてくれない」という理由。
人それぞれ事情があり、退職代行サービスを利用するのです。
違法なサービスではないのか
基本的には退職する意思は本人が伝えなくてはなりません。
これを他人が代行する行為は違法ではないのでしょうか。
答えは、使者として代弁する行為に違法性はありません。
非弁行為という言葉を耳にしたことはありますか?
弁護士でない者が報酬を得て交渉をおこなう行為を非弁行為と言って、これは違法行為にあたります。
ただ、退職代行サービスの多くは、ただ依頼者の「辞めたい」という言葉をそのまま伝言するだけに過ぎません。そのため、退職代行サービスそのものに違法性は無いのです。
即日退職ができるというのは本当なのか
本人が出社しないと思ったら電話がかかってきて「退職したいと言っています」と伝えられ、本人にも連絡がつかない、というケースも考えられます。
多くの退職代行サービス業者は「即日退職対応!」などと掲げています。
そのため、本人は出社せずに退職代行サービスが代わりに「退職したい」という旨を伝え、そのまま退職という流れになることも十分にあり得るのです。
これは労働基準法で定められた「2週間前までに退職を申し出る」というルールに当てはめると一見違法行為のようにも思われますが、正確に退職するのは2週間後で、それまでは籍だけ置いておきます。
2週間分は、有給休暇が残っており、その消化を本人が希望すれば有給消化となりますし、もし有給休暇が無ければ欠勤扱いとなります。
断ることはできるのか
退職代行サービスからの電話を受けて、退職を認めず断るということはできるのでしょうか。
結論から言うと、断ることはできます。
断った場合、退職代行サービスは依頼者である従業員本人に「断られました」と伝えます。
その後本人がどう動くかは本人次第ですが、交渉のために弁護士を立てられる可能性を十分に視野に入れた方が良いです。
また、退職は全ての労働者が平等にもっている権利ですので、頑なに退職を拒否すると訴えられたりユニオンが動き出したりすることも考えられます。
退職代行を使う理由
- 辞めたいと伝えるのが申し訳ないという理由
- 精神的に追い込まれたという理由
- 引き止めなどで辞めたいのに辞めさせてくれないという理由
企業側の対応の仕方
さて、それでは実際に従業員が退職代行サービスを使った際には、企業側はどのように対応したら良いのでしょうか。
注意点も含めて詳しく見ていきましょう。
退職代行サービス業者から連絡があったら契約関係の確認を
まず、本当に本人が退職代行サービスに依頼したのか、きちんと確認しましょう。
退職の手続きが全て終わってから「自分はそんな事をしていない」と言われトラブルになったら大変です。
本人と代行サービス間で契約が交わされているのか証明できるものを提示してもらうのも良いでしょう。
本人に連絡をしてみるのは1度だけ
退職代行サービスから連絡が来たら、当然本人に直接確認したくなると思います。
本人に連絡をするな、とは言いませんが、本人への連絡は1度だけと心に留めておきましょう。
退職代行サービスを使うぐらいですから、会社とは連絡を取りたくないと思っている依頼者も多いのが事実です。
1度電話をかけてみて応答しない場合は、何度もかけ直すのではなく、諦めて退職代行サービスのスタッフを窓口としましょう。
基本的には退職代行サービスを窓口として進める
本人は会社と直接連絡を取りたがらないことが多いため、本人に伝えたいことがあっても基本的には退職代行サービスを窓口として伝言してもらいます。
また、退職の手続きをする上でも、その指示(必要な書類や郵送先などの情報)を退職代行サービスのスタッフに伝えて、本人に伝えてもらうようにする流れで退職手続きを進めていきます。
交渉してきた場合は弁護士が退職代行者かどうか調べる
もし、退職日や退職金、有給消化などについて、ただ本人の意向を伝えるだけでなく、退職代行者が交渉をもちかけてきたら、弁護士による退職代行サービスなのかどうか調べてみましょう。弁護士であれば交渉行為も違法にはなりません。
また、ユニオンを発足させている退職代行サービスもあり、その場合も交渉可能なケースがあるため、弁護士ではない退職代行スタッフが交渉をしたとしても必ずしも違法行為とは言えません。
脅しは無効!逆効果の場合もあるため冷静に対応すべし
退職代行サービスを使って退職したいと言われてしまった場合の対応として気を付けたいのは、脅したり威圧的な態度を取ったり無視したりしないということです。
「本人が直接言わなければ退職させない」や「懲戒解雇にする」や「訴えてやる」あるいは「損害賠償だ!」などと言ったり、退職代行サービス業者からの連絡を無視したりすると、退職の手続きは進まずに本人は出社しないという最悪の状況が長きに渡り続くことになります。
また、退職代行サービスはボランティアで請け負う無料のサービスではありません。
本人はお金を払って退職代行サービスに依頼しています。つまり、それだけ本気だということです。本人の「退職したい」という意思が固い限り、会社に引き止めることはできません。
どのみち退職してしまうのであれば、無駄に引き延ばしたり脅したりすることは逆効果となってしまいます。
態度が悪かったり、誠意に欠けていたりすれば、会社の口コミなどに「辞めたいのに辞めさせてもらえない酷い会社」や「社員を大切にしないブラック企業」などと書かれてしまうリスクもあります。
これらの理由から、退職代行サービスによる退職の申し出に対しても、誠意ある対応できちんと退職の手続きを進めるのが得策と言えるでしょう。
退職代行に対する企業側の対応ポイント
- 退職代行サービスからの連絡に対する、退職希望者への本人確認は一回までが望ましい
- 退職希望者へは退職代行サービスを窓口として伝言
- 脅したり威圧的な態度をとってはいけない
まとめ
- 「退職するという意思表示を代行するのが退職代行サービスの役目
- 社員に退職代行サービスを使用された場合はそちらを窓口に
- 退職代行を使用した退職希望者に対しても丁寧に対応すべき