うつ病で退職した場合に失業手当(失業保険)はもらえる?傷病手当との違いと同時受給の可否

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仕事が楽しくやりがいを感じて生き生きを働ければ、これ以上幸せなことはありません。
ただ、多くの人が辛い仕事や大変な仕事に就いて、毎日必死に働いています。

仕事の内容や、職場の人間関係などが原因で多大なストレスを感じると、やがて『うつ』症状を発症するようになります。

もし仕事が辛くて『うつ』になってしまったら、そして『うつ』が原因で退職することになってしまったら、失業手当や傷病手当をもらうことはできるのでしょうか。

うつ病で退職した場合に失業手当はもらえるのか

まず、本記事のタイトルでもある「うつ病で退職したら失業手当はもらえるのか」という点について、先に結論をお伝えします。

うつ病で退職した場合に、失業手当はもらえます。

ただし、傷病手当を受け取らないという条件付きです。

この2つはとても大切なことなので、是非覚えておいてください。
どういうことなのか、これから詳しく解説していきます。

失業手当(失業保険)と傷病手当の違い

まず、失業手当と傷病手当の違いについて説明します。
失業手当は別名失業保険とも言い、仕事をしていない人に支給されるお金です。怪我をしていたり、病気になっていたりする必要はなく、勤続期間などの一定の条件を満たした全ての人が受け取れるものです。

一方の傷病手当は、その名の通り、怪我や病気によって働けない人に支給されるお金です。
怪我や病気であるという証明が必要になります。

この2つは、そもそも支給元が異なり、申請先も、申請方法も、条件も全く別物です。
違いを分かりやすくまとめたので、下記でご確認ください。

失業手当(失業保険)

条件 手続き 支給金額 支給期間 支給元
働く意思がありすぐ働ける状態であるにも関わらず失業中である ハローワークでおこなう 失業前の給料、在職期間、退職理由などにより変動(退職前の5~8割程度が目安) 再就職まで、あるいは期間満了まで 雇用保険

傷病手当

条件 手続き 支給金額 支給期間 支給元
傷病により4日以上勤務できず、給料が支給されていない 健康保険組合に申請書を提出 報酬月額の約3分の2 1年6ヵ月 健康保険

失業手当と傷病手当の同時受給はできない

前述の通り、失業手当と傷病手当は同時に受給できません。
なぜなら、失業手当は「働けるのに仕事が見つかっていない状態」の人に支給されるものであり、傷病手当は「傷病のせいで働くことができない」人に支給されるものだからです。

「働くことができない人」は失業手当の対象にはなりませんし、傷病の無い人は当然傷病手当の対象にはなりません。
つまり、この2つの手当を同時受給してしまった時点で大きな矛盾が生じるわけです。

ちなみに、正職員として就職していないからといって、アルバイトをしながら失業手当をもらうことも不可能です。失業手当は完全無職、収入減が全くない状態の人しか受け取れないものです。

どちらにするかは自分で決められる

うつ病は病気だから傷病手当しかもらえないのかというと、そういうわけではありません。
病気や怪我でも働ける仕事はあります。そのため、「病気や怪我だから働けない」と一括りにすることは非常に難しいのです。

うつ病を患っていても、自分の病状に合わせた仕事をしたいと思っている、しかしそのような仕事が見つかっていない、という状況であれば、これは「働けるのに職が無い」状況となります。従って失業手当の対象となるのです。

失業手当を申請するか、傷病手当を申請するか、それは本人が決められます。

傷病手当をもらってから失業手当に切り替えることも可能

うつ病の症状が酷く、とても働ける状態ではなくなって退職して、最初は傷病手当をもらっていたものの、その症状が改善して働きたいと思うようになったが職が見つからずに、今度は切り替えて失業手当をもらうということも可能です。

傷病手当は1年半が支給期間のマックスですので、これを過ぎたら失業手当に切り替えて給付金をもらいながら次の仕事を探す、という方法を取ることもできます。

ただし、病気の状態や、前職の記録などをチェックされて支給されるかどうか決まるので、まずはとにかく対象の申請先に問い合わせて申請してみることが大事です。

傷病手当をもらう時は診断書を用意する

うつ病で退職した際に、失業手当ではなく傷病手当の申請をする際には医師の診断書を求められるため、必ず心療内科などかかりつけの病院で診断書を発行してもらいましょう。

自費負担で数千円請求されることがありますが、申請のために必要なものですので、そこでケチって「要らないです」と言わないよう、しっかりと発行してもらうことが重要です。

「ちょっと『うつ』っぽいかも……」
「診断されたわけじゃないけど、この症状は間違いなく『うつ』だと思う!」

といった自己判断の『うつ』による退職で、診断書などが無い場合は傷病手当を受け取ることはできません。失業手当の一択となることを覚えておいてください。
傷病手当を受けたければ、必ず医療機関を受診してください。

うつは悪化する前に対処するべき

うつ病が原因で退職した場合の失業手当と傷病手当について説明しましたが、傷病手当をもらわなければならないほど、つまり働けなくなってしまうほど、うつを悪化させるのは良くないです。

経度のうつで退職し、他の職場であれば問題無く働けるため、再就職先が決まるまでは失業手当を受けて前向きに頑張る、というのがベストな状態です。

うつを悪化させてしまうと、後に取り返しのつかないことにもなりかねませんので、酷い状態になる前に対処することが何よりも大切です。

悪化するとどんどん自覚がなくなる

うつは悪化すると、自覚しにくくなるという特徴があります。
通常の病気や怪我ならば、悪化すればするほど自覚症状が出て「一刻も早く病院へ行かなければ」と思えるのですが、うつは、その逆になってしまうケースが多いのです。

うつになると、基本がネガティブ思想になります。
すると、何でもかんでも自分のせいにしてしまったり、自分には価値が無いと思い込んでしまったり、自分なんか何をやってもダメだと悲観してしまったりします。

それが更に酷くなると、自分など生きている価値もないダメ人間だ、などと思ってしまい、最悪の結果を招いてしまうこともあります。

自分は『うつ』だと自覚できずにどんどん自分を追い込んでしまう状況に陥ると、自分から病院へ行ったり、仕事を辞めたりする行動力が無くなってしまいます。
そうなる前に、「これはひょっとするとヤバイかも」と感じたら、即心療内科を受診してください。

周囲の理解と気付きが大切

『うつ』は自覚しにくい病気で、悪化すると更に自覚できなくなります。
自分で気付けないならば、周囲の人が気付くより外ありません。

いつもと様子が違う、笑顔が全く出なくなった、無気力でボーっとしている、何を考えているのか全く分からない、ヤル気が見られずにぼんやりしている、など、普段と明らかに異なる様子の時には病院へ連れていってください。

また、気付きだけでなく、理解も非常に重要です。
『うつ』は心の病気なので、「こうなれば治る」という分かりやすいラインがありません。そのため、一見元気そうに見えても『うつ』の症状に悩まされている人もいますし、完治のラインが分からないために治ったのか治っていないのかよく分からないという人もいます。

大切なのは周囲の人々の理解と気付き、そして手を差し伸べる温かさや優しさです。

うつがひどくなると退職すらできなくなる

うつ病の厄介なところは「思考停止」に陥るところです。
何が『うつ』の原因なのか考えることすらできなくなり、そこに「退職」という選択肢があることにすら気付かず、どんどん症状を悪化させてしまうのです。

辛いなら辞めればいい
うつ病になるくらいなら転職すればいい

そんな単純明快な事実にすら気付けずに、自分を追い詰めてしまうのが、うつ病の怖いところです。

また、自己肯定感が異常に低くなるため、辞めたいと思っても「私なんかに辞める権利はない」「上司に怒られたらどうしよう」といったネガティブな気持ちが先行して「辞めたい」と言い出せない人も多いです。

自ら退職できない場合は退職代行を活用する

仕事が辛く、うつ病になってしまった、あるいはうつ病になりそうなくらいストレスを抱えている、という場合は退職を考えましょう。

もし、職場で「辞めたい」と言い出せない、自分なんかに辞める資格なんかない、と思っていて自分から退職できない場合は、退職代行を活用してみてはいかがでしょうか。

退職代行は、依頼者に代わって会社に退職の意向を伝え、退職の手続きをサポートしてくれるサービスです。
会社に行くことなく、上司などにも会わず、連絡も一切取らずに辞められるので、一刻も早く仕事から離れた方が良いという方におすすめのサービスです。

『うつ』になる前に、『うつ』をこじらせる前に、人の力を借りて、ご自身の心身を救ってください。

まとめ

  • うつ病で退職した場合に失業手当はもらえるが、傷病手当と同時にはもらえない
  • 傷病手当を受け取る場合は診断書が必要
  • 自分で退職できない場合は退職代行サービスを活用