会社を辞めたいのに辞めさせてくれない。引き留めの予防と対策

いろいろと考えた末に「会社を辞めたい」と話しても、上司から「もう少しいられないか」などと引き留められてしまうことがあります。なかには、いつまで経っても退職届を受け取ってくれないブラック企業もあるようです。よって今回は、会社から引き留められないようにする方法と、万が一引き留めに遭った時の対応についてご紹介します。

すんなり会社を辞めたい時に気をつけること

スムーズに退職するためには、退職の意向を伝えた時点で「これは仕方ない」「引き留められない」と思わせることが重要です。そのために気をつけるべきことを3つまとめました。退職を申し出る前によく確認しておきましょう。

引き留めにくい退職理由を考える

最も効果的な予防策が、会社にとって引き留めの言葉をかけにくい退職理由を出すことです。待遇が悪い、人間関係に疲れた、仕事のやりがいが感じられないなど、会社のネガティブな面を退職理由として伝えてしまうと、場合によっては「改善するから考え直してくれ」と言われてしまうことがあります。

ですが、自身の病気・怪我や親の介護、遠方への引っ越しなどであれば、引き留めようがありません。とはいえ、全員が全員このような状況にあるわけではなく、これらの退職理由では嘘をついたことになってしまうこともあるでしょう。ふとした拍子に嘘がバレてしまう可能性を考えると、あまりおすすめできません。どうしようもない事情でない限り辞めさせてくれないような場合の最終手段として取っておきましょう。

引き留められにくく、嘘にもなりにくいおすすめの退職理由は、キャリアアップやスキルアップを目指して、あるいは別の夢を追って、今いる会社では実現できないことをするために転職するというものです。これを具体的に説明できれば、たいていの上司は引き止めることができません。

ポイントは「ここに留まっていたら実現できない」ということを必ず明確な理由とともに伝えることです。「それならうちの会社でもできるじゃないか」と言われてしまえばすべてが水の泡となってしまいます。「語学を活かした仕事がしたい」「子どもと関わりたい」「スポーツの世界に携わりたい」など、今の会社とは業界・職種の被らない内容にすると良いでしょう。転職先がどこなのかまでは言う必要がないので、本当かどうかを疑われることはありません。もし転職後に違うことが発覚しても、「先方の事情で内定を取り消された」「今はキャリアを積んでいるところ」など、いくらでも返答のしようがあります。

退職時期は繁忙期を避ける

どんな退職理由であれ、繁忙期に抜けるというのは会社からいい顔をされません。また、「せめてこの期間だけでも」と退職を先延ばしにされる原因にもなります。よほどの事情がない限り、退職するなら繁忙期は避けた方が賢明でしょう。同様の理由で、たとえ繁忙期でなくても人手が足りなくなるタイミングは引き留めに遭う確率が上がります。周りの人の退職・産休・育休のタイミングと被らないように気をつけましょう。

ちなみに、退職関係の手続きを行うのは人事なので、自分の事業部では忙しくなくても人事が忙しい時期(11月末~12月/3月~4月)は避けた方が良いかもしれません。退職に必要な対応が遅くなってしまう可能性があります。

どうしても退職したい時期が重なってしまう場合は、できるだけ早くに退職の意向を申し出てください。退職までに時間的な余裕があれば、会社側としても人員補充しやすいので引き留めに遭いにくくなります。

引き継ぎをしっかり行う

退職を引き留められる主な理由の一つが引き継ぎです。「せめて引き継ぎが完了するまで待ってほしい」「今は引き継げる人材がいないからもう少しいてくれないか」など、引き継ぎを理由に引き留められるケースは多々あります。

このような引き留めに遭わないためにも、引き継ぎの準備は前々から進めておきましょう。後任になりそうな社員がいれば、あらかじめ根回しするのも一つの手です。後任者がおらず、新しく人を雇わなければならないときには、自分がいなくても仕事が回るように、詳細な引き継ぎ資料を作成することをおすすめします。

また、社外対応を担う業務の場合は、取引先への挨拶と後任者の紹介もしっかり済ませましょう。その際、いつまでは自分が担当して、いつから後任者の担当になるのかを明らかにしておく必要があります。
挨拶も何もなしに会社を辞めてしまうと、取引先との関係が悪化しかねません。非常にまれではありますが、最悪の場合、会社の損失につながったとして訴訟が起こる恐れもあるのでよく気をつけましょう。

引き留めパターンとその対策

引き留められないように上記のような予防策を取ったのに会社から引き留められてしまうことがあります。そのような場合でも希望通り退職するための対策が必要です。そこで、ここらは引き留めのパターン別にどのような対応をしたら良いかを見ていきます。

①情に訴えかける

「会社には君が必要なんだ!」「あなたがいなくなったら、みんなが困る」など、その人の存在価値を誇張して、情に訴えかけてくるのが1つ目のパターンです。

日本人はこの「情に訴える」という手段に非常に弱く、「自分が必要とされている」「自分がいないと誰かが困る」と思うと意志が揺らぎやすく、会社に丸め込まれてしまう傾向にあるといいます。このように情に訴えられて引き留められた際には、なぜ退職を決意したのかを今一度思い出してみてください。退職という決断に至った退職理由を思い出せれば、やはり自分は辞めるんだという決意が固まるはず。あとは、上司にきっぱりと退職の意向が変わらないことを伝えるだけです。

②待遇の改善を提示する

「給料を上げる」「勤務時間を調整する」「昇進させる」「希望の部署に配属する」など待遇を改善するから辞めないでくれと言われるパターンです。ここで提示された条件が実現されるなら退職を思い留まっても良いと考えるかもしれません。ですが、安易に頷く前に必ず確認しておきたいことがあります。

それは、上司がその場で思いついた口約束であり、実際に果たされることはないかもしれないということ。その上司がどれほどの権限を持っているのかも考えなければいけません。さらに上の役職の人に打診してくれる可能性もありますが、その要望が通るとは限らないので、上司個人ではなく会社として待遇改善の了承が出ない限りは、返事をしないように気をつけましょう。

契約上の待遇を改善する場合には、新しい雇用契約書を用意してもらうのも良いですね。いずれにせよ、きちんと上層部にかけあってもらい、その結果を聞いてから退職するか否かを検討しましょう。

③退職時期の変更を訴える

退職自体は認めるけれど、退職時期を遅らせてほしいと言われるパターンもあります。転職や引っ越しなど、特別その時期に退職しなければならない理由がある場合以外、退職ができるなら多少遅くなっても構わないと考える方もいるでしょう。しかし、この時もやはり確認しておきたいことがあります。

引き延ばしの打診を受ける場合、それがいつまでなのかを必ず確認しましょう。引き継ぎのスケジュールや有休消化期間も踏まえたうえで退職日を再度設定してください。そして、新しい日付で退職届を出しましょう。退職届が受理されれば、それ以上の引き留めに遭う心配はありません。

ここをしっかりしておかないと、もう少しだけとズルズル先延ばしにされ続ける恐れがあります。新しい人を採用するまでと言いながらも、実際は採用活動をまったく行っていないことも考えられるのです。

なお、どうしても退職日をずらせない場合には、きちんとその旨を伝えるようにしてください。そのうえで、自分のしていた業務をまとめ、余裕を持って引き継ぎ資料の作成や身辺整理を行いましょう。

④損害賠償を請求するなどと脅す

いわゆるブラック企業の場合は、辞めたいのに辞められないという退職希望者が多いようです。ブラック企業はさまざまな手を使って退職を引き留めようとしてきますが、特徴的なのは脅しを使って退職を思い留まらせるパターン。

「損害賠償を請求する」「同業他社には転職できないようにしてやる」といった脅しもあれば、プライベートのことや個人的なことを持ち出して「○○をバラしてやる」といった脅しもあります。

ですが、こういった脅しに屈することはありません。まず、損害賠償や懲戒解雇は、それを実行するに足る十分な証拠がないとできないようになっています。また、同業他社への転職禁止については違法行為です。私たちには職業選択の自由が保障されています。

会社によっては就業規則や誓約書によって「競業避止義務」を定めているケースもありますが、これも永久ではありません。経済産業省の資料によれば、退職後1年以内の義務であれば有効性が認められることが多いようですが、2年を超えるものについては否定的に捉えられている判例が多いようです。そのため、たとえ競業避止義務を負ったとしても、退職後2年を過ぎれば自由に転職先を選べます。

それから、個人的な事柄で脅された場合も毅然とした態度を取れば逆に有利になるかもしれません。労働基準監督署に相談すると言うだけで大人しくなることもあります。それでもダメなら実際に労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。実行した場合は名誉毀損罪や侮辱罪にあたるので、あなたが後ろめたい思いをする必要はありません。

参考:経済産業省

対応に困ったら退職代行を活用する手も

今回は会社を辞めたい時に引き留められないための方法や、引き留めのパターン別に見た対応策についてご紹介してきました。ですが、退職の引き留めに遭ってしまい、どうしても自分では対処できない状況に陥ってしまうこともあるでしょう。そのような場合には、退職代行サービスを活用するのがおすすめです。

しつこく退職を引き留められ、会社を辞めたいのに辞められないという時は、退職代行サービスを依頼することで、プロのスタッフが代わりに退職の意向を伝えてくれます。退職に必要な手続き・やり取りの窓口になってくれるので、出社する必要もありません。

一度は退職したいと伝えたのに引き留められてしまい、また会社にかけあうのは嫌だという方には、ぜひ活用していただきたいサービスです。あなたの望む形で退職を実現するために、ぜひ今回の記事の内容を役立ててもらえたらと思います。