退職代行は非弁行為で違法?弁護士法違反にはならないの?

退職代行は非弁行為で違法?

「退職代行サービス」というものをご存知でしょうか。
これは、本人の代わりに職場に退職の意思を示してくれるサービスです。

この退職代行企業の利用者が増えていますが、

弁護士法違反(非弁行為)に該当するのではないかと言われることもあります。

ここでは、

  • 本当に退職代行サービスが非弁行為に該当するのか
  • なぜ非弁行為だと騒がれるのか
  • 違法性のある退職代行サービス企業を見抜く方法

などについて紹介していきます。

退職代行サービスは弁護士法違反(非弁行為)に分類されるのか?

最初にハッキリさせておきますが、一般的な退職代行サービス企業であれば、非弁行為(弁護士法違反)に分類されることはありません

非弁行為に分類されることはありません

ここで、非弁行為の定義をハッキリさせておきましょう。

非弁行為:弁護士資格を有していない人が、報酬目当てに交渉の代理を務めること

であると弁護士法によって決められています。

つまりは、「弁護士じゃないのに、お金をもらって誰かの代わりに交渉などをするのはダメですよ」ということですね。

では、本題の「退職代行は非弁行為に分類されるのか?」という話に戻しましょう。
ポイントとなるのは「交渉」をするのがダメということ。
退職代行の場合は「退職します」と「宣言」するだけであって、交渉はしないので弁護士法違反にも非弁行為にも分類されません。

しかし、これは優良な退職代行サービス企業に限ったことです。
過剰なサービスで利用者を増やそうとしている悪徳企業も存在しますので、
「退職代行サービス企業であれば何でも大丈夫」とは思わないでくださいね。

★ポイント

「交渉」は厳禁。
しかし、退職代行サービス企業は「退職します」と伝えるだけなので非弁行為には該当しない。

退職代行サービスは非弁行為なのか?

  • 一般的な退職代行サービス企業であれば、非弁行為(弁護士法違反)に分類されることはない
  • 非弁行為とは、弁護士資格を有していない人が、報酬目当てに交渉の代理を務めること
  • 退職代行の場合は退職の宣言なので非弁行為に分類されない

退職代行が非弁行為に分類されないのはなぜ?

普通の退職代行企業は「伝える」ことしかしないので大丈夫ということは、
ここまでの解説でお分かり頂けたかと思います。

ここからは、退職代行企業に許されている行為・許されていない行為に関して、さらに解説していきますね。

退職代行企業に許されている行為

退職代行企業に許されている行為

・退職希望の旨を伝達する
・「必須書類を送ってください」と頼む

両者とも「交渉」ではなく、「○○したい・○○してください」と伝えているだけですよね。
ですから、非弁行為にも弁護士法違反にも該当しません。

逆に、次のような行為は退職代行企業には許されていません。

退職代行企業が行えない行為

・支払われていない給料に関して「払え」と言う交渉
・有給休暇の買い上げ交渉
・有給休暇の取得交渉
・損害賠償請求を受けた際の対応
・パワハラ等の慰謝料請求
・退職届等の書類作成代行

上記の中で「交渉」に該当するものはもちろん非弁行為に分類されます。
それから書類作成を代行したり、何らかの請求をしたりすることも「伝達」ではないので、弁護士法違反とみなされます。

ですが、
「『退職したいと代わりに宣言する』ということそのものが、個人と企業の間の雇用契約に踏み入る行為であるため、非弁行為になる」
という意見も存在します。

しかし、退職代行企業を使ったとしても、
必要書類等の作成は当人がしなければなりませんし、それを勤め先に提出するのも本人の役目となります。
「退職したい」と本当の意味で伝えているのは「書類」の部分であり、
退職代行企業は「退職しますので!」と宣言しているだけであるため、弁護士法違反にも非弁行為にも分類されないと判断する考え方が今のところ主流となっています。

※退職届の定義

「退職します」とハッキリと意思を伝える書類。職場の人事部や上役等の一定の立場の人物が受け取った段階で「退職届を提出した」という扱いになります。そして原則として退職届の取り消しは不可能です。
ちなみに退職届を提出しても、受理されないこともあります。


しかし「退職代行」というものが登場してからまだ日が浅いです。
そのため、この先法律が変わって色々な規制ができてもおかしくないと考えておきましょう。

退職代行が非弁行為ではないポイント

  • 退職代行企業は交渉はできないが伝えるはできる
  • 退職代行企業は退職希望の伝達や必要書類の依頼は許されている
  • 退職代行サービスの場合は退職の宣言を代行しているだけなので、非弁行為には分類されないとされている

退職代行企業が弁護士法違反に該当する行為をしてしまう主なパターンは?

繰り返しになりますが、退職代行企業に許されているのは「伝える」という行為のみです。
ですが、サービスが行き過ぎて「交渉」までしてしまえば、それは弁護士法違反だと言えます。

しかし、有名でユーザーがたくさんいる退職代行企業であれば、
そういった非弁行為をすることはありません。
顧問弁護士等からきちんと教育されていて、ケースバイケースで弁護士を紹介したり助言をしたりしてくれる仕組みを構築しているからです。

ですから、利用者側が
「退職代行企業が弁護士法に違反する行為をして、面倒なことにならないだろうか……」
などと心配する必要はありません。

また、もしも法律を理解していない利用者に
「残業代がちゃんと出ていないので、交渉して勝ち取ってもらえませんか?」
などと言われても、ちゃんと断ってくれます。

ちなみに、本当に退職代行企業が弁護士法に違反することをしたとなれば、
その企業は法的に罰を受けることになります。
それでも利用者側が直接的な罰を受けることはまずありませんが、そうなった時点で退職活動が難航すると考えてください。
トラブルが長引いて、最終的に退職すること自体が叶わない恐れもあります。

ですから、必ず優良な退職代行企業を使うようにしましょう。
また、そういった企業を使う側としても、最低限の知識を有しておきましょう。

そのためにも、実績が薄い退職代行企業は基本的に使わないようにしてください。
運営歴が短い退職代行企業の場合、非弁行為だと知らずに交渉も代行してしまう恐れがあります。
 

退職代行企業が弁護士法違反を犯す主なパターン

  • サービスが行き過ぎて法律で禁止されている交渉をしてしまう
  • 非弁行為だと知らずに交渉してしまう

非弁行為のリスクがある退職代行企業を見抜くポイントは?

まず、「悪徳退職代行企業は確実に存在する」という意識を持ってください。
「そんなの実際にはないんでしょ?」という認識は間違っています。
「精神的な弱っている人が利用することが多い(のでコントロールしやすい)」「世間に広く認識されているわけではない」ということから、むしろ比較的悪質な企業が多いと考えておくくらいでちょうど良いです。

では、悪徳退職代行企業を見抜くための要点を挙げていきますね。

  • オフィシャルウェブサイトが存在しない
  • サイトがあっても住所や代表の名前などが掲載されていない
  • 法人化されていない
  • 連絡方法がツイッターやラインだけである

上記とは逆に、良質な退職代行サービス企業であれば、オフィシャルウェブサイトを作っていますし、住所や代表者の名前などの重要なこともハッキリと記されているものです。

とにかく「会社情報が分かりにくい=後ろめたいことがある」と考えて間違いありません。

また近年、ツイッターやLINEによる依頼や相談を受け付ける退職代行企業が増えています。
もちろん、そういった連絡方法を用意することは最近の世間の動向を考えれば当然のことかもしれません。
ですが、「ツイッターやLINE以外の連絡先がない」というのは明らかに怪しいです。

メールアドレスやTEL番号等も明確に記されている退職代行企業だけに絞ることをおすすめします。

非弁行為のリスクがある退職代行企業を見抜くポイント

  • 悪徳退職代行企業は確実に存在するという意識が必要
  • オフィシャルウェブサイトがあり、住所や代表者の名前なども明記されていることをチェック
  • ツイッターやLINE以外の連絡先がないというのは明らかに怪しい

弁護士に退職代行を任せるべきなの?

近年、退職代行を実施している法律事務所(弁護士)が多くなってきています。

確かに弁護士に退職代行を任せれば、非弁行為うんぬんの危険性がなくなります。
ですが、「弁護士による退職代行」には次のような欠点があります。

弁護士に退職代行を任せることの欠点

  • そもそも退職代行をしている弁護士があまりいない
  • 弁護士費用が高い
  • すぐに対応してもらえない恐れも

退職代行企業に任せた場合は3~5万くらいが相場となります。
キャンペーン等を利用すればもっと安価で退職できるケースも少なくありません。

ですが、弁護士に任せると数十万の出費が発生してしまう可能性が高いです。
また、弁護士に任せると、「成功報酬」「着手金」「相談料金」などが個別に発生して、最初の想定よりも高くなってしまう恐れも。もちろん「交渉費用」も掛かってくることでしょう。

一方、良質な退職代行企業の大半は「退職活動開始~退職完了まで料金一律」というシステムを採用していますので、それほど大きな出費になることはありません。

また、そもそも退職代行を受け付けてくれる弁護士もあまりいませんし、当日中には動いてもらえない可能性が高いです。

ですから、単純に退職したいだけなのであれば、
退職代行企業を使ったほうがすぐに退職できるはずですし、料金も少なくて済みます。

ただ、

  • 慰謝料請求を行いたい
  • 交渉(残業代、給料関連など)をしたい
  • 退職届の作成を代行したい

などと考えているのであれば弁護士を利用することをおすすめします。
ただ、「退職届の作成代行」はともかく、上の2つについてはもはや「退職代行」の領域を超えていると思いますが。

弁護士に退職代行を依頼するときのポイント

  • 当日中には動いてもらえない可能性が弁護士は高い
  • 弁護士に退職代行を任せれば、非弁行為の危険性が低い
  • 弁護士に退職代行を任せれば安全だが高額なので、退職代行企業も選択肢

退職代行は弁護士法違反(非弁行為)に該当するの?【まとめ】

「退職代行が弁護士法違反に分類されるか否か」に関して色々な意見があるのは確かです。
しかし、「伝える」ことだけをしている退職代行企業であれば非弁行為とみなされることはないと判断するのが自然です。

ただ、利用者が基本的な知識を有していないと、「交渉」のような非弁行為に分類されることを退職代行企業に任せようとしてしまうかもしれません。
依頼した相手が優良な退職代行企業であれば断ってくれますが、実力のない・悪徳な退職代行企業であれば、そのまま引き受けてしまう場合も。

そうなれば、穏やかに退社できることはまずありません。

退職代行企業を使うのは、スムーズ&平和に退職したいからですよね。
そうなるためにも、退職代行企業はきちんと厳選するようにしてくださいね。

ポイント

  • 般的な退職代行サービス企業であれば、非弁行為に分類されることはまずない
  • 交渉に該当するものはもちろん非弁行為に分類される
  • 弁護士に退職代行を任せると対応の範囲は広いが料金は高い